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ヘルミネは、保養地での出会いから2年後、アンドレ・ド・ロレーヌを自らの侍従として王宮に雇い入れた。それ以来、親し気な2人の様子にアンドレがヘルミネの愛人ではないかという噂が絶えなくなった。
ヘルミネはそんな噂も気にせず、堂々と他の使用人を下げてアンドレと2人だけで自室で過ごすことも多い。新婚時代に夫フレデリックの部屋と離れた場所に自室を作らせたのは自分ながらいい仕事をしたとヘルミネは自負する。
「ねえ、アンドレ。私、ここにあまり長くいたくないわ」
「王妃陛下、もう少し我慢して下さいませ。それか私抜きで旅行に行くのはいかがでしょうか?」
アンドレはヘルミネの前に跪き、右手の甲にキスをした。そのキスはただの挨拶にしては異様に長く、アンドレの唇はヘルミネの手の甲にべったりと触れている。
護衛オリヴィエはアンドレをギロリと睨み、侍女イザベルの目は失望を隠していない。他の侍女達はまた始まったかと半ば呆れている。
「オリヴィエ、それに貴女達、ちょっと席を外して頂戴」
「王妃陛下、お言葉ですが……」
「オリヴィエ、口答えは許しません」
「……申し訳ありません」
オリヴィエは爪が掌に食い込むほどに拳を強く握り、下を向いて外へ出て行った。
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