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アンドレはヘルミネと自分の局部を拭い、服を整え、丸薬を渡した。
「アンドレ、これ、飲まなきゃいけない?」
「最近、陛下と閨を共にしていないんだろう? それなのに君が妊娠したらまずいよ。それに君はもう2度と子供を産みたくないって言っていたじゃないか」
「ええ……それはそうなんだけど……貴方だって子供欲しいでしょう?」
「そりゃそうだけど、今の関係じゃ堂々と君と子供は持てないよ……」
ヘルミネは子供なんていらないと常々思っていたが、アンドレと男女の関係になってからは年々容貌が衰えていく中、年下の彼を繋ぎとめられるか不安で、子供というもっと強い繋がりが欲しくなってきていた。なのに『堂々と子供は持てない』と言われ、ヘルミネは萎れた。それを見てアンドレは慌ててヘルミネの額にちゅっとキスした。
「でも君と一緒にいられるだけで僕は幸せだよ」
「本当?」
「うん、本当だよ。でも君にはオリヴィエみたいな崇拝者がいて僕はいつも気が気じゃない」
「私が愛してるのは貴方だけよ」
「嬉しいよ。オリヴィエは哀れだね。護衛としてもまだまだよ。嫉妬が露わになってたよ。あれは仕事のために苦言を呈した顔じゃなかった」
「まあ、彼はただの護衛よ」
「かわいそうに。君は旅先では彼の『妻』だったのに」
「あれはただのカモフラージュよ。貴方だって知っていたでしょう?」
「そうだね。でも彼の目は愛しい妻を見る目だったよ」
「そんなの気持ち悪いわ」
7歳年下の若い護衛の思慕と敬愛の混じった視線が以前はいつも心地よく誇らしかったのに、アンドレに溺れるようになってから、ヘルミネは嫉妬を隠し切れないオリヴィエを鬱陶しく思うことがある。それでもヘルミネはオリヴィエとの関係を断ち切るつもりはない。同世代のイザベルがオリヴィエを慕って身体の関係すら持っているのに、彼が彼女より8歳も上のヘルミネを愛しているというのは優越感を持ててよい。
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