6.父の本音

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 微かにノックの音がしてアマーリエはビクッとした。いつの間にか小説に没頭していたようだ。慌てて本を枕の下に隠してどうぞと答えた。入って来たのは予想通り、父ルートヴィッヒだった。 「アマーリエ、起こしたかな?悪いね」 「まだです。お父様とどうしてもお話したいから待ってたの」 「そうか、そうか。私もたまにはお前の寝顔を見るだけじゃなくて話したいと思ってたから丁度いいよ」  ルートヴィッヒはアマーリエの隣に腰を下ろし、相好を崩して娘の頭を撫でた。 「それで何を話したいんだい?」 「私もお兄様みたいに諜報部隊の一員にして下さい」  ルートヴィッヒは頭を抱えた。 「はぁ……お前もか……」 「え? 今、何と言いましたか?」 「いや、何でもない。返事はナイン(ノー)だ」 「どうしてですか? 私はオルデンブルク公爵家の娘です」 「でも王家に嫁ぐ身だ。王家の一員は諜報員にならないことになっている」 「でもそれは法律で決まってるわけじゃないんですよね?」 「どうしてそんなことまで……とにかく法律で決まっていなくても今までそうだったんだ」 「どうしてですか?」  諜報員の仕事に寝台の上で情報を引き出すことも入っていることを閨教育の終わったジークフリートや上の息子に話すことには、ルートヴィッヒは戸惑わなかった。でもまだ月の物も来ていないアマーリエはまだ話が別だ。
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