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「彼……アウグストは……私の子。王位継承権3位……私の死後は2位……フレディ……文書をドロテアに……」
「どういうことですか! アウグストは貴方の叔父の養子でしょう?!」
フレデリックは手にしていた文書を母に見せた。アウグストをエルンストの子として認知し、王位継承権を与えるという署名入りの文書だ。
ドロテアは、その文書をフレデリックから奪い取って食い入るように読み、中身を理解してすぐにクシャクシャに握りつぶした。それを床に投げ捨てると、死相が浮き出て痩せ衰えている夫に構わずに食ってかかったが、子供達が止めた。
「母上、父上を安らかに見送ってあげてください」
「そうよ、お母様。この人を弟と認めることとはまた話が別よ」
「いったい何なの?! あんなに否定しておいて結局は隠し子だったのね! 最後の最後で打ち明けて何の謝罪もなく死ぬってどういうこと?!」
「王太后陛下、いや、継母上、王族として今後もよろしくお願いします」
「お前の継母になった覚えはないわよ!」
バチンと大きな音がしてアウグストの左頬が真っ赤になった。
一連の騒動で気が付いた時にはエルンストはこと切れていた。一国の王の最期としては寂しい限りだった。
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