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フレデリックの異母弟アウグストの性格は、異母兄とかなり違う。育った環境故に用心深く、人を中々信じられず、傲慢で欲深く、野心が大きい。王位継承権2位の王弟で宰相かつナッサウ公爵なのだから、国内では国王と王太子の次に地位が高いのに、欲の深いアウグストは最高位を目指したくなった。
アウグストが父のお手付きになった元王宮侍女の母と市井で暮らしていた頃、父親らしき男性がアウグストの寝入った後に時々こっそり訪れて援助もしていることは、子供ながらも薄々気付いていた。母に聞いても決してその人が誰か教えてくれず、誰が父親かも知らなかった。
援助があっても貴族の妾程度の生活水準であり、フレデリックら異母きょうだいの育った環境とは比較にもならない。10歳にも満たない歳で何が何だか分からないまま実母と引き離されて高齢のナッサウ公爵に引き取られ、愛情も金銭もかけられず、公爵令息とは程遠い環境で育てられた。
単なる君主と臣下の関係とずっと信じていた国王エルンストが死にそうになってから『自分が実の父だ』と告白してきても全く嬉しくなかった。死の床で体温を失いつつあった実父を見ても悲しみはわかず、今までの苦労は何だったのだと彼を呪った。
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