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アマーリエはマナーを考え出すと頭がこんがらかってしまい、教師に質問を出されても正解を言えない。でもアマーリエの身体が覚えていたのか、身体が自然に動いて実際のマナーはほぼ完璧にできるから、身体を動かして確認すれば正解を言ったり、書いたりはできる。だけど教師は、身体を動かさないでも答えてほしいようだ。アマーリエの左腕と左肩はうまく動かないので、左上半身の動きは少々体勢が崩れてしまうのだが、それは多めに見てくれた。ある日、アマーリエは王妃教育の一環でマナーの授業を受けていた。
「おかしいですわね。いざやってみるとほぼ完璧なマナーですのに、筆記試験では全くと言っていいほどできませんね」
「やってみてできるなら、いいではありませんか」
「それはそうかもしれませんが、将来、お子様をお産みになったら知識はお役に立ちますわよ」
「そういう時は先生みたいに完璧な教師を雇いますから大丈夫です」
「まあ、その、それはそうですわね」
かわいらしい顔でにっこりと微笑まれて褒められると教師も簡単に丸め込まれた。
授業の後、教師が退出すると、アマーリエは大きく伸びをした。
「あー、疲れた。マナーの座学なんて実際にできればどうだっていいじゃない。ねぇ、ジルヴィア?」
「お嬢様、お言葉ですが、知識は大切です」
ジルヴィアはここで伝家の宝刀を抜く。
「まだまだ未来の王妃として学ばなければならないマナーもございます。将来、お嬢様が隣に立って殿下が誇りにできるようなお妃様になりたいと思いませんか?」
「うん、確かにそうだね。頑張るよ」
「それでこそお嬢様です」
「さあ、ジークとお茶会よ。楽しみだわ!早く行きましょう」
アマーリエは、はやる気持ちを抑えて静々と淑女らしくお茶会のセットが用意されている庭園のガゼボへ向かった。王妃教育の後、ジークフリートの都合があえばアマーリエは彼とお茶を飲んで会話を楽しむ。優しいジークフリートと話すのは楽しくてアマーリエは彼と話せば話すほど、彼のことが好きになった。
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