10.王宮での逢瀬

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10.王宮での逢瀬

 その日、ジークフリートは事前に聞いておいたアマーリエが今一番食べたいお菓子を用意させていた。ティースタンドの下段にはアレンスブルク王国の伝統的なチョコレートトルテが四角いミニサイズにカットされて置かれており、真ん中の段にはアマーリエの好きな苺と生クリームのトルテ、最上段には色とりどりのマカロンが載っていた。 「わあ、綺麗!これってソヌス王国の王都で流行してるマカロンですよね! わざわざ取り寄せてくださったのですか?」 「いや、王宮のパティシエに作らせたんだ。本場のがよければ取り寄せるけど、鮮度が落ちるからよくないか……」 「でもうれしいです」 「アマーリエが食べたいって聞いてソヌス王国王都のパティスリー・レ・セゾンのレシピを取り寄せたんだよ」 「それってあの『没落令嬢は白馬の王子様に溺愛されました』にも出てきたケーキ屋さんですよね!」 「君がそう言って喜ぶと思ってその菓子店を選んだんだよ」 「ソヌス王国出身の王妃陛下もきっとお喜びになりますよ。でもレシピって秘密じゃないんですか?」 「彼女には1個もあげる気はないね」 「えっ?!」 「けど僕は君のためなら何でもする」  にっこりと微笑む美少年にアマーリエの心臓はズキューンと射抜かれ、母親にマカロン1個すらあげたくないという彼の本音に驚いたことをすぐ忘れてしまった。
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