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11.高級娼館
「殿下、本当に行くのですか?」
「ルプレヒト、しつこいぞ。私は何が何でも行く。お前が一緒に来ないなら1人で行くだけだ。ほら」
茶髪のかつらをかぶって眼鏡をかけたジークフリートは、ブルネットのかつらをジークフリートの側近ルプレヒトに差し出した。茶髪のルプレヒトはため息をついて主人からかつらを受け取った。
「予約した私が行かなくちゃ殿下は入れないじゃないですか。仕方ないですね。私は殿下の行く所にはどこにでもついていきますよ。でも覚えておいて下さいよ。私は本心では反対です。こんなことはオルデンブルク公爵家に任せておけばいいんです」
「王族じゃないとできないこともあるだろう?」
「未来の義父を信用していないのですか?」
「そういう訳ではない。人には立場上、できることとできないことがある。あの股の緩い女が王妃であって父上が調査を命じない以上、オルデンブルク公爵家は手も足も出ない」
「殿下!」
「構わないさ。本当のことだ。父上には困ったものだ。どうしてあの女を見限らないのだろう。あんなのが母親なんてゾッとするよ。でも少なくとも僕が生まれた頃はまだ浮気してなかったらしいことだけには感謝しないといけないね」
ジークフリートはヘルミネに母親としての情など最早持てない。それどころか、堂々と王宮で愛人を侍従として囲う貞操観念に反吐が出る。父が命じさえすれば、不貞の証拠を掴んで離婚できるのに、父はそうせず、未だに母の潔白を信じている。情けない父にもジークフリートは失望していた。
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