3.問診改め尋問

1/2
前へ
/100ページ
次へ

3.問診改め尋問

『くたびれジャケット』氏改めこの家の主治医ヨーゼフは、あれこれとアメリーに聞いてきた。 「お嬢様、ここがどこかお分かりですか?」 「私がどこに運ばれたのか分からないけど、そんなに遠くの筈はないからソヌス国内でしょ」  アメリーが『ソヌス』と言ったのを聞いて3人の顔が陰った。しかも彼女にとっては自宅の筈なのにどこに運ばれたかわからないと言うのだ。 「今日は何月何日ですか」 「それは私がどのぐらい気を失っていたかによるでしょ?」 「3日間です」 「えっ、そんなに?」  月日は、事故に遭った日から3日足した日で合っていた。でもヨーゼフによれば、今年は王国歴445年というのだ――アレンスブルク王国がソヌスに併合されるちょうど15年前、ジークフリートが死ぬ10年前! 併合の150年後の本来のアメリーの生きる時代に王国歴は最早使われていない。  アメリーが自分の名前がわからないと言ったら、シャルロッテが大きな声で嘆き始めてまた話が進まなくなった。やっと聞き出した今のアメリーの名前は『アマーリエ・フォン・オルデンブルク』だと言う。 (待てよ……この名前……どこかで聞いたことある……)  アメリーがズキズキ痛む頭をフル回転させて思いついたのは、悲劇の王太子ジークフリートの婚約者がそんな名前だったこと。彼女はジークフリートよりも結構年下で18歳になってから彼と結婚するはずだった。だから婚約期間が長くてジークフリートはその間、男女を問わず浮名を流しまくった……その結果が心中だ。
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加