11.高級娼館

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 ジークフリートとルプレヒトは、上位貴族の寝室と言っても違和感のない豪奢な部屋に通された。そこで待っていたのは、20代半ばか後半ぐらいの妖艶な美女でカトリンと名乗った。彼女の艶やかなヘーゼルブラウンの髪は丁寧に巻かれ、滑らかな白磁のような肌を誇る顔に新緑のように輝く瞳と赤いさくらんぼのように艶やかな唇が目立つ。胸元が大きく開いたドレスからは豊かな乳房が零れ落ちそうである。貴族夫人なら絶対にしないような組んだ脚がドレスのスリットから太腿まで見えてなまめかしく、どんな男も鼻息を荒くしそうだ。そんな色っぽい女性を目の前にしても、ジークフリートとルプレヒトは全く顔色を変えない。 「それで何の御用ですか、殿。まさか3人で一戦交わおうという訳ではございませんでしょう? 3人でというのも困りますが、未成年はもっと困るのですよ。なにせ未成年を客に取るのは禁止されていますからね」 「『殿下』? 何のことかな? 私は幼く見えるかもしれないが、これでも15歳だよ」 「私を見くびっていただいては困りますよ、王太子殿下に側近のヴァッカーバート伯爵令息ルプレヒト様」  ジークフリート達の変装は見破られていた。カトリンは、この最高級娼館でも最も高い値がつく娼婦であると同時に、知る人ぞ知る情報屋である。それどころか彼女自身がこの娼館の所有者であり、他の娼婦も情報屋として使っていることはほとんど知られていない。
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