12.ツヴァイフェル伯爵令嬢

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12.ツヴァイフェル伯爵令嬢

 成人したジークフリートは娼館通いの噂だけでなく、夜会で男女問わず色々な人間に声をかけ、時には共に休憩室や庭園に消えることも人々の話題になっていった。もちろん祖母ドロテアの怒りを買ったが、ジークフリートに好都合なことに彼女は寄る年波で徐々に体調が悪化し、次第に孫息子を構うどころではなくなっていた。  とある夜会でのこと――17歳になったジークフリートはツヴァイフェル伯爵令嬢パオラが出席するという情報を事前に得て彼女を探していた。パオラの父ツヴァイフェル伯爵は王宮に勤める高官だが、カトリンによれば隣国の革命派と繋がっているらしい。今まで判明した限り、王宮内に潜んでいる革命派の中で一番の大物だ。  ジークフリートの目に他の令嬢達と談笑している鳶色の髪の令嬢が止まった。事前に入手したパオラの写真や似姿と同一人物だ。ジークフリートはパオラに近づいた。 「会話中のところ、失礼。ツヴァイフェル伯爵令嬢、貴女と踊る許しを得られないだろうか?」 「王太子殿下のお誘いを断る女性などいませんわ。とても光栄です」  パオラも彼女の周りの令嬢達も話しかけてきた男性が眉目秀麗で有名な王太子ジークフリートと一目で分かった。他の令嬢達は、婚約者のいる王太子が一介の伯爵令嬢にダンスを申し込んだのに驚きを隠せない。中には嫉妬の感情を露わにする者もいた。2人を見ている人々の中には、あの遊び人の王太子がなぜこんな地味な令嬢を誘うのかという疑問を持つ者もいたが、パオラはそんなことは露知らず、驚いたり嫉妬したりする令嬢達を見て有頂天になった。  ジークフリートに手を取られてパオラは頬を染めた。そして彼と共にホールの真ん中に移って踊りだす。 「貴女のことをもっと知りたい。今度出席する夜会を教えて下さい」  ジークフリートはパオラの腰にかける手にぐっと力を入れた。パオラはますます頬を赤くした。
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