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夜会の後、ジークフリートはいつものようにルプレヒトと自室へ戻った。部屋に着くと、大きなため息をついてソファにドサッと身を投げた。
「誘惑が成功したのにお疲れの様子ですね」
「ああ、これからあのツヴァイフェル伯爵令嬢と長期間親しい振りをしなくてはいけないからな。今まではその場限りの関係だったからまだ気楽だった」
「でもそれも殿下が選んだ道です」
「わかってるよ。それでもアマーリエへの罪悪感が拭えない」
「何の罪もない令嬢を騙すことには躊躇はないのですね」
「それもあるよ。父親の罪は彼女の罪じゃない。子供は親を選べない。僕と王妃もそうだ。でも僕はあの女がこれ以上王妃の道を外れるのなら、排除する覚悟がある。親は選べないが、地位のある者はその地位に見合う責任を負って誤った道を行く親を正すべきだ。彼女はそこまでする覚悟はなくて令嬢としての生活を謳歌するだけだろう。そこが僕と彼女の違いだ。僕はこの道を選んだ以上、甘いことは言っていられない」
「それを聞いて安心しました。きつい言葉をかけて失礼しました」
「わかってる、僕の覚悟を聞きたかったんだろう?今日はもう疲れた。寝るよ」
ルプレヒトが部屋を下がり、ジークフリートは寝台に入ったが、中々寝付けなかった。身体は疲れているのに頭が妙に冴えていたのだ。気が付いた時には窓から朝の光が入ってきていた。
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