12.ツヴァイフェル伯爵令嬢

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 その夜会以来、ジークフリートとパオラの姿を共に見ることが多くなった。ただ、ジークフリートはパオラと密室に2人きりにならないようには気を付けていた。それと同時にジークフリートは夜会で他の女性に声をかけなくなり、オルデンブルク公爵家にアマーリエを訪ねて行くこともほとんどなくなった。アマーリエは王宮での王妃教育の後、ジークフリートの都合があえば一緒にお茶を飲んだものだったが、それも全くと言っていいほどなくなった。  パオラにも婚約者がいるものの、冷めた関係で相手のことを気に入っていない。彼女はいつしかお互いの婚約を破棄してジークフリートと婚約できると信じるようになった。  ジークフリートとパオラが親しくなって数ヶ月後のある日、ツヴァイフェル伯爵家ではジークフリートを伯爵家に招く件について親子喧嘩が勃発していた。  ツヴァイフェル伯爵は革命派との関係を妻子にも義両親にも言っていない。唯一、自分の代になって勤めだした忠実な執事にだけは話していて革命派との連絡役にもなっている。当初、執事は革命派との関係に良い顔をしなかったが、民主化は避けられない情勢だから今のうちに協力しておいて革命後の政府に恩を売っておいた方がいいと伯爵は説得した。 「お父様、どうして殿下をうちにお招きしていけないのですか? いらしたいというご希望をお断りするのは不敬では?」 「殿下には婚約者がいらっしゃるし、お前にもいる。不敬よりも不貞のほうが問題だ! なのに最近のお前の振舞いは何だ? 今後、夜会に出席するのは禁止する!」 「冗談じゃないわ! あんな冴えない男と結婚するより、王太子妃になる方がいいでしょう?」 「オルデンブルク公爵令嬢が王太子妃になることは決まっている」 「フン、あんなのまだ子供じゃないの! もういいわ、お祖父様とお母様に頼むから!」 「パオラ、おい! 待て!」  養子のツヴァイフェル伯爵は引退した先代伯爵の娘である妻に強く出れない。パオラの祖父母と母は、パオラが王太子妃になれる夢を見て諸手を挙げて王太子を伯爵家に招待した。 ------ ツヴァイフェル伯爵は、最初は別の名前で考えていたのですが、Adelslexikon.comというサイトで偶然von Zweiffelという名前を見つけ、これにしました。Zweifel(fが1個少ないですが)はドイツ語で疑いとか、不信を意味しますので、ちょうどいい!と思った次第です。
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