15.絡み合う思惑

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15.絡み合う思惑

 今夜の夜会は、王妃ヘルミネの母国ソヌス王国とは別の隣国の外交官が新任で来たことを歓迎して王宮で開かれた。本来なら、王妃ヘルミネが外交官と、王太子ジークフリートが外交官夫人と最初に踊る慣例になっている。しかしそんなしきたりなど、ヘルミネは意に介さず、さっさとアンドレと踊りだし、外交官は一瞬ムッとした顔をした。ジークフリートは、そんな場合に備えてこの国で王妃の次に高貴な女性オルデンブルク公爵夫人に外交官とのファーストダンスを依頼してあった。  パオラも流石にこの時はジークフリートと離れて4人のファーストダンスを見ていた。それが終わった途端、パオラはジークフリートの所に戻って腕を絡めた。ジークフリートはさりげなく腕を離そうとしながら、次に踊る予定のジルヴィアを探すと、ジークフリートに厳しい目線を送るオルデンブルク公爵夫妻が目に入って冷や汗が出てきた。 「ねえ、、何イライラしてるの?」 「その呼び方は止めてもらえないか?」 「どうして? オルデンブルク公爵令嬢には許しているんでしょう?」 「婚約者だからね」 「ひどいわ。殿下は私のことをパオラって呼ぶのに」 「じゃあ今度から君のことをツヴァイフェル伯爵令嬢と呼ぶよ」 「嫌です! パオラって呼んで。その代わりに私が婚約者になったら殿下をジークって呼んでもいいかしら?」  ジークフリートは、そんな時が来ることは未来永劫ないと思いながら、『どうぞどうぞ』と安請け合いした。そんな彼の返事を聞いてパオラは小躍りした。
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