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16.ルプレヒトにも春が来る?
ジークフリートは、夜会から自室に帰って正装も解かずにソファの上にドサッと身を投げて寝転がった。会場から付いてきたルプレヒトが向い側のソファに座っていてもお構いなしだ。
夜会の前にエスコートの事で母ヘルミネと口論してしまい、パオラもそれに便乗してジークフリートにべったりくっついてきてジークフリートは精神的にも肉体的にもぐったりだった。
「あーあ、美形の遊び人王子様が台無しですよ」
「何だよ、ルプレヒト。そんなの僕の事じゃないだろ」
「もちろんジークフリート王太子殿下の事です。今日は殿下らしくなかった。どうしてパオラと2人きりで易々とテラスに出たのですか? 万一あの女が殿下に襲われたとか嘘を吐いたら、大スキャンダルでしたよ。最悪、アマーリエ様との婚約を破棄されて彼女と婚約しなくちゃいけなかったかもしれません」
「そのぐらいでパオラなんぞと婚約しなきゃいけなくなるわけがない。僕の悪い噂なんてもうとっくに流れてる」
「それにしても不用心です。今まで2人きりになったのは男性同士か、女性だったら未亡人か既婚夫人、未婚でも阿婆擦れだと有名な女だけだったのに」
「お前、何気に僕のことを落としてるな。不敬極まりないぞ」
「今更ですよ。それより今日の失態はいったいどうしたんですか?」
「ツヴァイフェル伯爵家への潜入のためのお茶会がまだだからな。パオラをまだ誤魔化して伯爵を油断させないといけない。それに僕はお前に合図を送っただろう?それだけお前のことを信用してるんだ。感謝してくれ」
「本当ですか。とってつけた言い訳みたいに感じます」
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