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「正直言えば、疲れててうまい言い訳が思いつけなかったんだよ。アマーリエの侍女、わざと知り合いの令嬢を5人続けて送り込んできやがって……意趣返しだな」
「そりゃわざとだな……やるなあ、その侍女。トロイ子爵令嬢でしたっけ?」
「なんだ?興味があるのか? 僕はああいう強気の女性は好みじゃないけど、お前は好きなんだな」
「ち、違います! 面白いと思っただけで……強いのはアマーリエ様も同じでしょう?」
「アマーリエはあんなんじゃない。かわいいよ」
ルプレヒトは、ジークフリートの目は曇っていると思った。アマーリエはまだ13歳なのに芯が強い。後2、3年も経ったらジルヴィアみたいになるんではとボソッと呟いたが、ジークフリートには聞こえなかったようだ。
「トロイ子爵令嬢は確かまだ独身で婚約者もいないぞ。20歳ぐらいだと思うな。26のお前にピッタリじゃないか?これを聞いたらお前の母上が喜ぶだろう」
「絶対に余計なことを言わないで下さい!うちの母が聞いたら次の日には相手の実家に突撃しますから」
「はいはい、言い訳はいいから」
ルプレヒトは、今まで我儘な王太子の補佐をするので精一杯だからと言って両親の勧める縁談をいつも断ってきた。ルプレヒトがそもそも特定の女性に興味を持つのが珍しい。ジークフリートは潜入調査が終わったらお節介を焼いてやろうと決意した。
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