17.不倶戴天の毒婦

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17.不倶戴天の毒婦

 ジークフリートは、夜会から自室に帰って正装も解かずにソファの上にドサッと身を投げて寝転がった。会場から付いてきたルプレヒトが向い側のソファに座っていてもお構いなしだ。  ジークフリートが今回の夜会でこんなに疲れたのは、確かにジルヴィアの意趣返しのせいもある。でも精神的にもっときたのは、控室での実母ヘルミネとの口論だった。 「そもそもは夜会の前にあの女と喧嘩したからこんなに疲れたんだ。アイツは王国の面子を潰しただけじゃない。革命派と繋がっている疑いのあるアンドレを重用して父上を蔑ろにし続け、国を危機に陥れる。もう我慢できない。あの女を排除するぞ。あれは我が王国を害する毒婦だ」  アマーリエは、ジークフリートと婚約してから半年間で毒を盛られたり、誘拐されそうになったり、果ては落馬した。ジークフリートは真相を解明しようとしてこれまで努力してきた。でも後もう一歩という所でいつも邪魔が入り、ヘルミネとアンドレが怪しくても何の証拠も見つけられなかった。アマーリエが毒を盛られた王宮のお茶会でお茶を出した侍女をジークフリートが尋問させようとした矢先、彼女は馬車にはねられて亡くなった。アマーリエの誘拐犯の賊はその場で全員成敗されてしまって誰も尋問できなかった。  でも最近、落馬事故の経緯が分かってきた。遠乗りに同行した近衛騎士のうち、1人だけ騎士団を退団後に行方が分からなくなっていたが、別件で捕まった。その男が他の護衛の隙を狙って吹き矢でジークフリートの馬に傷を付けたと自供した。
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