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19.アマーリエの懇願
どんな事が身に起きようとジークフリート付きの諜報員になりたいというアマーリエの懇願をルードヴィヒは簡単には了承できなかった。愛娘に何が起きてもいいなど思える訳がない。
アマーリエも父の気持ちは分かるだけに切ないが、ジークフリートの命には代えられない。アメリーがアマーリエとして目覚めた当初、ルートヴィヒとシャルロッテが両親でフィリップが兄だという感覚にまだ慣れなかったが、彼らの家族愛に包まれた数年間はその感覚を変えた。
「お父様、ごめんなさい。お父様もお母様も悲しませたくはないんです。でも何があっても殿下を失いたくない。お父様が許して下さらないのなら、私独自に活動します。もちろん、そちらの方が危険であろう事は承知の上です」
ジークフリートもルードヴィヒに諜報部隊入隊を拒否され、自分だけで活動すると彼に宣言した。そのジークフリートが今、どのように諜報活動をしているかルードヴィヒも知らないわけではない。そんな事を自分の娘にさせたくはない。
ルードヴィヒは、悲壮な覚悟を決めている娘を見つめ、大きなため息をついた。
「……分かった。認めよう」
「お父様! ありがとう!」
アマーリエは飛び上がるように立ち上がって向かい側のソファに座っている父に抱き着いた。ルードヴィヒは娘が喜んだのは嬉しかったが、複雑な気持ちだ。
「喜ぶのはまだ早い。男性に身体的に近づいて情報収集をする仕事はさせない」
「お父様! 私は殿下を守るためなら手段は選びません!」
「それを承知しないなら入隊させない」
「それでは独自に活動します」
父娘はテーブルを挟んで睨み合った。
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