21.射撃練習

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21.射撃練習

 アマーリエが這う這うの体で着いた先は、最初の家と同じような建物だった。  ジルヴィアはアマーリエに耳当てを付けた後、拳銃を壁の的に向かって撃ってみせ、見事に真ん中を撃ち抜いた。深窓の令嬢であるアマーリエだけでなく、現代の女子大生アメリーも拳銃など触ったことすらなく、アマーリエは銃身と銃倉の間から漏れる煙と射撃の轟音に怖気づいてしまった。  この時代には、まだ排莢や次弾装填を自動化した半自動銃(セミオートマチック)は発明されていないので、ジルヴィア達諜報員が使うのは回転式拳銃、別名リボルバーである。使用している拳銃はダブルアクションなので、トリガーを引くと、撃鉄が通常位置から撃発準備位置まで後退してそのまま射撃できる。  ジルヴィアがアマーリエに右手で拳銃のグリップを持たせ、試し撃ちさせると、撃った反動で銃身が上に跳ね上がってしまった。アマーリエの拳銃には、弾丸の入っていない空包が入っており、反動がなくなるまでは空包を使うことになった。だが空包でも怪我の危険が全くないわけではない。  両手でグリップを持つと拳銃が安定して命中率が高まる。しかし諜報員は素早く撃たなくてはならないことが多く、その場合は両手でグリップできないこともある。だからアマーリエは両手だけでなく、右手でも左手でも片手グリップでも的に当てられるように射撃練習することになった。ただし左手での練習は、左腕と左肩の機能回復訓練の後に開始する。  アマーリエが右手と両手でそれぞれ数発射撃練習した後、空包がなくなった。 「射撃練習はこれで終わりにしましょう。次からは拳銃の手入れの仕方も教えますね。さあ、上に上がって下さい」  ジルヴィアはアマーリエに階段を指さした。最初の家にも、立ち入らなかったものの、同じようなロフトのような上階があった。上階の床は途中で終わっていて吹き抜けになっており、ロフトの端からは家の入口が見える。
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