24.哀れなスケープゴート

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24.哀れなスケープゴート

 パオラの父親の元ツヴァイフェル伯爵は、謎の獄中死を遂げた。残された彼の妻と彼女の両親の前伯爵夫妻、パオラ姉弟の5人は、捕らえられてから2週間ほど経った。風呂にも入れない身体は異臭を放ち、髪の毛も皮脂でギトギトに固まってフェルトのようになった。囚人服も汗と皮脂と牢の汚れですっかり汚れて匂いが酷い。生まれながらの貴族であった5人はそんな屈辱に納得できる訳がなく、互いに罵り合ってストレスを発散していた。 「あんたの夫の罪でとんだとばっちりだ!」 「何言ってるの! あんな男を私の夫にしたのはお父様とお母様でしょ!」 「うるさい、うるさい! 私は何も知らなかったんだ! なのにこんな目に遭うなんて理不尽だ!」 「それを言ったら、私だって知らなかったわよ!」 「姉さんがそもそも直接の原因なんだよ! あんな王子の見かけに騙されて鼻の下を伸ばしてうちに招待しなければよかったんだ!」 「違うわよ! お父様が革命派なんかの甘言に乗ったからよ! 私は無関係なの! ジークがすぐに助けに来てくれるはずよ」  パオラの弟は薄汚れて所々黒くなった顔で姉をポカンと見て次に笑い始めた。 「ハハハハハ! おめでたい頭だね! 姉上は王子様に騙されたんだよ! アイツは姉上なんて露ほども好きじゃなかった。ただ革命派を摘発するために利用しただけなんだ!」 「うるさい! 黙れ! そんなはずない!」  5人は手錠をかけられたまま掴み合いの喧嘩を始めた。あまりにうるさいので、牢番がやってきて『飯抜きになる』と脅されてやっと5人は静かになった。
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