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何日も荷馬車に揺られてようやく着いた鉱山の強制労働所で5人はやっと数週間ぶりに入浴できた。一番若いパオラは需要が多く、到着した夜、すぐに初仕事になった。何がなんだか分からずに粗末な仕事部屋に行かされたパオラは、仕事の後に汚れ切った身体のまま伸し掛かってくる獣にギシギシ音をたてる寝台で初めて身体を開かれた。その後も毎日同じことの繰り返しで、心身の痛みに泣き叫べば、『うるさい』と怒鳴られて殴られることもあり、パオラの身体はすぐに青あざだらけになった。
パオラが『仕事』の後で思い出すのは、未だにジークフリートのことだった。まだ恋しいと思う一方で、どうして騙したのかと憎く思うこともあり、彼のことをどう思っていいのか複雑な心境だった。
ある晩、パオラの所に来た『客』は強制労働所では一風変わっていた。ここでは珍しい、清潔感が残るその男は、パオラを抱くことも殴ることもなく、静かに話しかける。
「君はパオラ・フォン・ツヴァイフェル伯爵令嬢だろう? こんな所にいる女性じゃない」
「その名は捨てました」
「誰のせいで捨てさせられたのか、わかっているだろう? ここを出て元のような生活をしたいって思わないか?」
「その事は考えたくありません」
「本当に? 王子が憎くて憎くてたまらないだろう? 彼は、君を好きでも何でもないのに好きな振りをして利用するだけ利用して捨てたんだ。いや、捨てただけならいい。君自身は何もしていないのに、娼婦より酷いことをさせられている。娼婦だったら報酬をもらえるのに、君はただで身体を弄ばれている。ほら、ジークフリートが憎いだろう?」
「に、憎くなんか……」
「いいんだよ。正直な気持ちを言って。このままここにいたら、君は騙されただけなのに、搾取され続けるだけだよ」
「に、に……憎いわよっ!!」
「そう、その意気だ」
男は不気味に口角を上げてニッと笑った。
それから数日後、パオラの姿が消えた。男の姿もなく、それどころか男の正体を知る者もいなかった。残った元ツヴァイフェル伯爵家の4人はパオラ脱走の連座で罰を受けてますます疲弊していき、1年後にはパオラの祖父母は続けて亡くなった。
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