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25.毒を食らわば皿まで
ツヴァイフェル伯爵家を断罪してからしばらく経ったある晩、ジークフリートはとある夜会にルプレヒトと共に出席していた。
ジークフリートがふと強い視線を感じてその方向を見ると、ヘルミネを彷彿とさせるブルネットの髪の令嬢がいた。力強い瞳はヘルミネと同じ緑色だ。彼女はジークフリートと目が合い、妖艶に微笑んだ。ドレスから零れ落ちそうな豊満な胸といい、くびれた腰といい、男好きする身体つきだが、顔をよく見ればまだジークフリートと同じぐらいの年齢に見える。
ジークフリートは、隣のルプレヒトにひそひそ声で話しかけた。
「ルプレヒト、父上にあてがう女性は見つかったか?」
「いえ、まだです」
「あれからもうどのぐらい経ってると思ってるんだ。それなら、あのブルネットの令嬢はどうだ?」
「どの女性ですか?」
「右側にいる、真っ赤なドレスを着ている女性だ。あの女を彷彿とさせると思わないか?」
ジークフリートは、ルプレヒトの返事を聞く間もなく、その女性の方へ近づいていった。
「やあ、先ほど目が合いましたよね。お名前をお伺いしても?」
「王国の小さき太陽、王太子殿下にご挨拶申し上げます。メラー男爵が娘、アーデルグンデと申します」
彼女の言葉には、微かにソヌス訛りがあった。
「へえ、私が王太子だって知ってるんだ。そんな堅苦しい挨拶は止めにして踊ろうよ」
ジークフリートは、首を縦に振ったアーデルグンデの手を取ってホールの中央に躍り出た。1曲目を踊り終えてもジークフリートはアーデルグンデを離さず、腰をぐっと引き寄せて身体を密着させ、2曲目を踊りだした。2曲連続して踊るのは、通常は婚約者か夫婦だけだ。人々は、2人を見てパオラの次の愛人候補かと噂し始めた。
ジークフリートは踊りながらルプレヒトに目で合図した。ルプレヒトはため息をつきながら、2曲目が終わりそうなタイミングで飲み物を調達し、バルコニーへ出る2人のすぐ後ろに続いた。
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