25.毒を食らわば皿まで

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 バルコニーでジークフリートは、ルプレヒトからグラスを受け取り、アーデルグンデに差し出した。 「ダンスで喉が渇いたよ。貴女もどう?」 「ありがとうございます」 「では貴女の美貌に乾杯!」 「王国の小さき太陽に乾杯!」  ジークフリートは、余程喉が渇いていたのか、一気に飲み干した。 「本当に喉が渇いてらっしゃったのね。お付きの方にもう1杯、取りにいっていただいたらどうかしら?」 「いや、いいですよ。飲み過ぎると酔っぱらってしまいますからね」 「あら、私と2人きりになるのをそんなに警戒されてますの?」  アーデルグンデがクスクスと笑いながらそう言うと、ジークフリートの数歩後ろで控えていたルプレヒトは苦言を呈した。 「君、不敬だよ」 「いや、ルプレヒト、構わない――アーデルグンデ、君とは本音で語りたいからね」 「それは誘って下さっていると思っていいのかしら?」 「君がそう思ってくれるなら、そうでいいよ」 「では、私の望むように解釈させていただくわ。嬉しい」  アーデルグンデは、ジークフリートの腕に抱き着いて豊かな胸を押し付けてきた。ルプレヒトは、ゴホンゴホンとわざとらしい咳をして彼女に文句を言った。 「君、殿下は真面目でいらっしゃるから、そういうのは止めて下さい」 「あら、私が聞いた噂とは違うわね。私とは真面目な交際をご希望と解釈してよろしいの?」 「ああ、真面目なのがいいね。でも残念だけど、もうそろそろ行かなきゃいけないんだ。今夜は君と話せて嬉しかったよ」  ジークフリートは、そう言ってアーデルグンデの手を取って甲に唇を落とした。アーデルグンデは頬を染めた。 「まぁ、お世辞でも嬉しいですわ」 「お世辞なんかじゃないよ。ではまたね」  アーデルグンデは、バルコニーを出て行くジークフリートとルプレヒトの後ろ姿をじっと見ていた。その顔には先ほどの高揚は見られず、冷徹な表情をしていた。
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