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ジークフリートは、アーデルグンデとの会話の後すぐに、ルプレヒトと共に夜会から退出し、王宮の自室へ向かった。
「ルプレヒト、あの令嬢をどう思う?」
「微かにソヌス訛りが気になりますね。でも敏感でなければ気にならないほどです」
「やっぱり。母上の若い頃を彷彿とさせるような外見だけど、父上に近づけるのは止めたほうがいいな」
「そうですね。あちらから殿下のことを見つめてきましたからね。最初から何らかの意図があって殿下に近づくつもりだったんでしょう」
「彼女に近づくぞ。毒を食らわば皿までだ」
「……仕方ないですね。止めても無駄なんでしょう」
「ああ、無駄だよ。それじゃあ、父上の愛人候補を頼むよ」
それからというものの、ジークフリートはパオラの時のように夜会でアーデルグンデといつも踊ったり、一緒に外出したりして頻繁に一緒にいられるところを見られるようになった。その噂話は広がり、まだ社交界デビューをしていないアマーリエにも届いた。アマーリエはこの頃、王妃教育と諜報員の訓練で忙しく、ジークフリートと会う時間をほとんど持てていなかった。
「ねえ、ジルヴィア。ジークが最近一緒にいる令嬢ってなんていう名前なの?」
「その話は腹立たしくてしたくありません!」
「ジルヴィアが教えてくれないなら、他の侍女に聞くしかないけど……」
「はぁ……分かりましたよ。アーデルグンデ・フォン・メラーです」
「えっ?! もう知り合ったの?!」
思わず叫び声をあげたアマーリエをジルヴィアは怪訝そうに見たので、アマーリエは慌てて何でもないと誤魔化した。
アーデルグンデの名前は、アメリーがアマーリエとして目覚める前、162年後の世界では、ジークフリートの心中相手として知られていた。彼女の実家のメラー男爵家は爵位を買った新興貴族で元々の起源は不明だ。後世では、彼女は一説にはソヌス王国の改革派のスパイだったとも、本当にジークフリートの愛人だったとも言われ、相反する説がある。
でも心中したのは、アメリーの知っている歴史では今から7年後の王国歴455年だ。史実では知られていなくてもそんなに前からジークフリートはアーデルグンデと知り合っていたのか、それとも今のアマーリエがタイムパラドックスを起こして彼は彼女と早く知り合ったのか。いつジークフリートが心中事件を起こすか、いや心中を装って殺されるのか、アマーリエは不安で仕方なくなった。
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