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「私の話を聞いてくれないか?」
ジークフリートは、アーデルグンデを抱きしめたまま、彼女に問うた。
「私は光の王太子とか言われて賞賛されているけど、内実はそんなんじゃない。家族に恵まれず、孤独だ」
「私も庶子として育ちましたから、おこがましいかもしれませんが、理解できます」
「ありがとう……父は浮気三昧の母の実態を信じたくなくて愚かにも目を瞑って自分を嫌う妻の尻を追いかけて続けている。母は母で若い燕に有頂天になって不倫旅行三昧、夫も息子も放置。それだけならまだ私的な問題で百歩譲って我慢もできよう。でも彼女は王妃として自分の振舞いがどんなに愚かで今の国情に害をもたらしているか分かっていない。唯一、王太后だけはある程度まともではあるけど、彼女の硬直的な古臭い頭はやはり今の情勢にいい影響を与えない。かと言って祖母としての彼女も及第点はあげられないな。彼女にとって大事なのは孫息子としての私じゃなくてアレンスブルク王国を継ぐ王太子としての私だ」
「ジーク……私でよければ私がお傍にいます」
「ありがとう……私が1番我慢ならないのは、母だ。アレを母と呼ぶのも汚らわしい。でもアレの腹から私は生まれたんだ。そんな私も汚らわしいと思わないか?」
「そんなはずはありません。貴方は誰からも賞賛される立派な王太子です」
「そうだろうか……確かにアレが私を産まなければ私はこの世にいなかった。それだけは感謝しているけど……アレの存在そのものが、アレに関わるもの全てが汚らわしくて憎らしい。私も……私自身も汚らわしい!」
ジークフリートは、アーデルグンデの出自を聞き出そうとして自分の家族の話を始めた。だが口をついて出る言葉に理性が追い付かなくなり、彼の感情は千々に乱れた。
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