27.王の愛妾候補

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 そんな経済状態だから、ダニエラはどこか外で働きたかったのだが、住み込みだと負担が全て弟にいってしまう。かと言って家から通える範囲では、平民の営む勤め先しかなく、領主の娘が領民の下で働いて金銭を得るなんて恥知らずなことをしてほしくないと両親に大反対されてしまった。ダニエラ達の両親はこんな経済状態になっても貴族の誇りが忘れられないのだ。仕方なく使用人達の多くが長期休暇を取る時期にだけ短期で隣の領地の領主の家で働いているが、領主の娘が貧乏男爵令嬢のダニエラを見下して辛く当たる。それでも貴重な現金収入を手放す訳にはいかず、ダニエラは3年前から年2回だけ我慢して働いている。  このままでいけば、ダニエラは持参金を払えないが、両親が娘を売るような縁談を断っているので、生涯独身だろう。 「ふーむ……このままだとダニエラ嬢は生涯独身だろうから、父親程の年齢の男に愛人として宛がってもいいだろうって事か……私達は鬼だな。彼女の家族だってそんなのは望まないだろう?」 「私達は、この国を救う為には修羅になろうと決めたのです。それに彼女にとってはそれ程悪い話じゃないかもしれませんよ」 「どうしてだ?」 「彼女自身は家の為になる縁談を望んでいます。だから親兄弟に無断で決断させればいいんです」 「でもこれは縁談じゃないぞ」 「やり方次第によっては縁談ですよ」 「俺達は鬼畜だな……」 「彼女の弟にもメリットがありますよ。彼女も両親も跡取り息子に学をつけさせてやれなかったのを残念がっています」 「弟は19歳か? 今から学校にやるのは無理でも王宮で文官見習いをさせてやるぐらいはできるだろうな。でも領地を一気に救う程の金は出せないぞ。そんな事をしたら、他の貴族が黙っていない」 「そんな大金は払う必要ありませんよ。彼女には陛下の侍女、弟には文官見習いになってもらって給料を払う。それだけでもあの一家はかなり助かります。それと男爵家には殿下の個人歳費で領地経営をよく知る文官や家事をしてくれる使用人を派遣するといいでしょう」 「俺の歳費で……?!」 「はい、愛妾計画は殿下のアイディアで陛下の個人的な幸福を満たす目的のものですから、王室の公的財産を使う訳には参りません。でも陛下がダニエラ嬢を気に入れば、陛下が個人歳費から払って下さるでしょうから大丈夫ですよ」 「何が大丈夫なんだかよく分からないな……」 でもジークフリートは、修羅になって泥を被る覚悟を決めた。
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