滅法野郎

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神格化された分際であり、自己を神格化する気はない。神殺しも厭わない俺はそれでも崇め立てられれば、自殺も有り得るだろう。如何せん武士故に死に際は滝の畔に似ている。澄み切っていて穏やかなのだ。「そ、それって、時空が歪んでいるんですか?ひっ!あ、有り得ないでしょう?悪魔の仕業ではないですか?」ヒルレンは俺の芸術作品を畏敬の念で解釈して来た。事もあろうに悪魔だなんだと…イカれている。「神の所業ぞ…。」俺ははにかんでいた。まぁしかし、天は見逃すまい。時空を歪めた俺に更為る刺客を差し向けるに決まっている。「あの…あの、もしかして、レフィルさん?そうでしょ?あっははっ!レフィルさんじゃないですか?私ヘロナーです。知りませんか?ヘロナー早乙女(さおとめ)って有名何だけどな…。」ヘロナー早乙女と言う男。ポニーテールに麻の着物、割と長身であり、頭も良く、禄も高い…如何せん食わせ者だ。女流を担う日本男児と謳うが、俺には解せん存在だった。「ひ、人と人は等しく平等に渡り合える様に出来ています。それが単純に力の差のある対峙であれ、同年齢ならば、結果は一目瞭然とは行きません。」ヒルレンが立ち上がり、どうやらヘロナー早乙女に諭していた。「あら…織土州の巨人こと、ヒルレン伊藤(いとう)じゃないの。あっははっ!縮み過ぎよっ!!何が惜しいの?」ヘロナー早乙女はヒルレンを見るなり、馬鹿受けし、腹の底から笑んでいた。「この街は変です。僕を欺いてただで済む訳がない。」ヒルレンは真顔で言い放った。「そ、そうよ…。時間が止まる様に誰も居ないのよ。歩冠は何れ地獄と化すのよ。」ヘロナー早乙女は携える刀を握った。「紅月(べにづき)か…。血の気が引く…。」俺は奇しくもヘロナー早乙女の挙動を追っていたのだった。
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