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ばか
葉月を愛してる。何百年も前から。
「こんにちは」
葉月以外はなにも要らない。
「すみません、駅までの道をお聞きしたいんですが、よろしいですか?」
犯行は雨の日に。血が流れて広がるから。
「・・・ありがとうございます。ではさようなら」
永遠に。
「葉月ちゃん」
「なに?」
「今日も可愛いね」
「あ、ありがとう・・・」
葉月は毎日可愛くなる。今日は昨日より可愛い。つまり明日は今日より可愛い。何百年も前から、ずっとずっと可愛い。恐ろしい女だ。
「葉月ちゃんは怖いの平気だね」
「うん。だって幽霊なんて存在しないもの」
「どうしてそう思うんだ?」
「神様がこの世に存在しないから」
何度生まれ変わっても、葉月は神を呪っている。俺が葉月を探し出すまでの間に、必ず、なにかが起こってしまう。それが腹立たしい。
「でもね雪くん、神様みたいな人は存在するよ」
葉月の口癖。
「悪魔みたいな人が存在するようにね」
まるで自虐するように言う。
「この映像、作り物だよねえ。無理があるでしょこれは・・・」
テレビは『恐怖映像特集』という番組を報道している。
「葉月ちゃん」
「なに?」
「俺が化け物だったらどうする?」
「こんなに綺麗で格好良くて優しい化け物なら大歓迎」
「じゃあ、白くてか弱い兎さんを食べちゃおうかな」
「『マテ』できるでしょ、狼さん。番組が終わってからね」
「信じないのにこういうの見て楽しいのか?」
「映像技術の進歩に吃驚するばかりだよ。お粗末なものは笑っちゃうけど」
葉月の白い肌の、柔い膨らみの下に、真っ赤な血が流れていると思うと、どうしてもドキドキしてしまう。
「・・・どこ触ってるの」
「もう待てない」
「こんな小さな胸触って楽しい?」
葉月は、いつだって俺を拒まない。
「綺麗な肌・・・」
舌を這わせるだけで気持ち良い。
「いいにおい・・・」
「同じシャンプーとボディーソープでしょ・・・」
「葉月ちゃんの肌のにおいが、いい」
「ばーか・・・」
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