最終階層 ドラゴンブレイカー・迷宮の果てに

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守哉の過去を話そう。  守哉は父親がヤクザであることから、同級生達に敬遠され「友達」と呼べる者は誰一人いなかった。机でたった一人座るだけの毎日を過ごしていたのである。 給食も一人、体育でペアを組む相手もいない、一緒に登下校をする相手もいないと孤独に孤独を極めていた。 小学一年生の時点でこの状態。まだ精神的に未熟な少年に与えられる「孤独」は守哉の心に深い傷を与え、凍りつかせるのであった。 小学二年生に進級してもその状態は変わらなかった。友達が出来ないなら学校なんてつまらないと不登校になりかけていたところに救世主が現れた。 光忠である。光忠は周りが守哉に話しかけない中、積極的に話しかけて「友達」になったのである。 守哉にとって生まれて初めて出来た友達であった。孤独によって傷つき凍りついた心も光忠と友情を育むことによって癒やされ溶けていった。 光忠であるが、私立の西京院大学附属小学校からの転校生である。校風が合わずにストレスからくる体調不良を起こし、二年生から転校した先が公立の喜多城小学校であった。 光忠は転校生故に守哉の事情を一切知らなかったからこそ、友達になったのである。 光忠も後から守哉の父親がヤクザであることを別の友人や教師から聞いて「付き合わない方がいいと思うよ、怖いよ」と忠告されたのだが「子供は子供同士、大人は関係ない」と一蹴して友達関係を続けるのであった。 守哉が光忠を「親友」と思うまでに時間はかからなかった。お互いに「光っちゃん」「守っちゃん」と呼び合うようになり、周りから見ても「親友」と思われるぐらいに仲良くなっていたのであった。  光忠は近所の公園で守哉と「ちゃんばら遊び」を行っていたのだが、光忠は普段の剣道の稽古と同じノリで行っていたため、守哉のことを徹底的に捻じ伏せていた。剣道道場の小倅故に達人たる剣を「ちゃんばら遊び」とは言え、受け続けていれば剣の振り方は覚えるもの。 守哉の剣の振り方は春日井剣道道場が門下生に教えるものと同質になっていくのであった…… ちなみに、小学六年生になった今でも春日井剣道道場式の素振りを趣味として続けている。
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