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最終階層 ドラゴンブレイカー・迷宮の果てに
地下鉄が闇を割いて走っていく。光忠はその一番端の席で抜き身の黄金剣を座席に立てかけ、じっと眺めていた。
守哉が光忠の隣に座り、声をかけてきた。
「こんな観光地のキーホルダーみたいな剣なんてくれてどうしたいんだろうなぁ? あの婆さん」
「まぁ、もうすぐ外に出れるんだし『お土産』ぐらいに思っとくよ。これ、金だから高く売れたりして」
「バーカ、金って言うのは出元がしっかりしてないと売れないんだぞ? 金塊とかゴールドバーとかには番号が振ってあって、それがないと『身元不明』の金って扱いでどこも買い取ってくれないぞ?」
「ふーん、そうなんだ。詳しいね? 切古くん」
守哉は一瞬険しい顔をした後、機嫌悪げな荒い口調で述べた。
「オヤジの組のシノギでやってるの知ってるだけだよ! 借金のカタとかでこういう金塊持ってるヤツから没収してるだけだけどな!」
普通に教えてくれればいいのに、どうしてこんなに荒い口調なのだろうか。そもそも、俺と話す度に不快そうな表情をするのがいつも不快だ。気分を害した光忠は意を決して守哉に尋ねてみることにした。
「ねぇ? 俺って切古くんに嫌われてる?」
「は!?」
「いやあさ? 俺と話す度に怒ったような声になるし、嫌そうな顔するし。そういうの不愉快なんだよ」
「……光っちゃん。わからない?」
「何? いきなり渾名で呼んで?」
「俺、お前のことこう呼んでたんだぜ? 覚えてない?」
光忠は宙を見上げて守哉に「光っちゃん」と呼ばれた記憶を思い出そうとしたのだが、どうしても思い倦ねがなく首を横に振ってしまう。
「切古くんと俺って今日が初対面みたいなもんだよね? あんまり学校来ないし」
守哉はその言葉を聞いた瞬間、涙目となった。そして、光忠を力強く肩から抱きしめた。
その勢いによって座席に立てかけていた黄金剣が倒れて床に落ちる。
「光っちゃあん……? 何でそういうこと言うんだよ……? 俺、悲しいよぉ……」
誰に対しても荒い口調で居丈高にしか接しない守哉が、涙目かつ恭しい口調になっている。
光忠はわけもわからずに尋ねた。
「あ、あの? 切古くん?」
「嫌だ! 名字で呼ぶな! 光っちゃん! 昔みたいに『守っちゃん』って呼んでよぉ…… お願いだからさぁ……」
「あ、あの? 昔って?」
「そうかぁ…… 光っちゃんにとって、俺は数多くの友達の一人なんだよなぁ…… わかってたけど…… こうやって言われると辛いわ…… 俺にとっては『たった一人の友達』だったんだよ? 親友って思ってたんだよ?」
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