最終階層 ドラゴンブレイカー・迷宮の果てに

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 そんな二人の関係に終焉が訪れたのは小学三年生への進級であった。 クラスが別々になり、光忠の方に新しい友達が出来て、別のクラスの守哉とは関係が疎遠になってしまった。 そのクラス分けであるが…… 当時の担任教師が「春日井剣道道場の息子様にヤクザの息子の悪影響を与えてはならない」と、忖度で決めたことである。 クラスが別々になったことで、光忠は守哉のことをすっかり忘れてしまった。元々、人当たりのいい性格で運動神経も良いことから友達も多く、楽しい小学校生活を謳歌するのであった。 クラスが別々になっても守哉は光忠のことを一切忘れず、小学二年生の楽しい親友との時を(よすが)にしていた。不登校気味であっても「光忠と一緒の日々」が楽しく忘れることが出来なかったのである。  小学六年生のクラス分けで守哉は再び光忠と同じクラス、六年一組になった。 光忠と守哉が仲が良かったのは四年前のこと、五年生時の担任はそれ以降に喜多城小学校に着任したために、そのことを知らずに適当にクラス分けをしただけの話である。 この当時を知る教師はもう、皆他校への異動をされている。  守哉は再び光忠と同じクラスになり「また友達になれる」と希望を持った。 しかし、光忠は多くの友達に囲まれており、自分の入る余地はなくなっていた。それでも、いつかは話しかけに来てくれると希望を持っていたのだが、成されずに学校生活は手から零れ落ちる砂のように過ぎて行く…… それはつまらない学校生活に他ならなかった。 実を言うなら、守哉が今回の遠足に行くことに決めた理由は、担任の永江先生に「春日井の奴と同じ班にしてくれるなら遠足来てやるよ」と言ったからである。 願いは叶い…… 光忠と話すチャンスを伺っていたのだが、多くの友達に囲まれ自分なぞ見えないかのように微笑む笑顔を見ているだけで胸が痛くなり、足を止めさせてしまうのであった。 そんな中で起こるダンジョン「ヒドラ」への異世界転移。守哉はその衝撃で気絶し、目覚めたのは光忠が永江先生を呼ぶ声だった。正直なところ「うるさい」と感じ耳障りだ。 それに守哉が文句を言ったことが二人にとっての四年ぶりの会話だった。 しかし、光忠は他人行儀にも「切古くん」と名字で呼んできた。 なぁ…… どうして昔みたいに「守っちゃん」と呼んでくれないんだ?  「切古くん」と呼ばれるだけで虫唾が走る。その度に光忠への憎しみが募る。だが、大好きな親友であることに変わりはないために憎みきれない。 だから、こうして一緒にいられるうちは守ってやりたい。一緒にダンジョンを駆け抜けていくうちに思い出してくれるかもしれないし、脱出に成功した後に思い出してくれるかもしれない。 その時を夢見て、守哉は光忠と一緒に居続けたのであった。
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