地下一階 チュートリアル・地下鉄の駅は迷宮に変わっていた

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地下一階 チュートリアル・地下鉄の駅は迷宮に変わっていた

 地下鉄の電車が丸目のライトで地下の闇を引き裂きながら、鉄の線路を走り抜けていく。 その地下鉄車両には、小学生の団体が乗り込んでいた。小学生達は県立喜多城小学校の六年一組の児童達である。今日は、小学校の秋の遠足で県立西川動物園に行くためにクラス全員で地下鉄に乗ったのであった。 本来ならば大型バスでの運送が予定されていたのだが、バス会社へのバス料金の振込を依頼され、バス料金を預かった教師がその料金をそのまま持ち逃げをしたことで、各クラスは遠足の行き先に応じた別の交通手段を用意する羽目になってしまったのだった。 六年一組の場合は、担任教師の永江先生が自腹を切っての地下鉄移動である。  先頭車両(一号車)の一番端の席に座り、憂いを浮かべたような顔とお気に入りの赤ジャケットを窓の外に鏡写しにし、地下鉄の暗闇をじっと眺めるのは春日井光忠(かすがい みつただ)。スポーツ万能で性格も明るく六年一組(クラス)の人気者である。そんな彼に一人の女子が声を掛けた。 「春日井くん? 今朝から浮かない顔してるけど、どうしたの?」 女子の名前は若宮愛菜(わかみや あいな)。クラス委員長を務める真面目な女子でクラスのムードメーカー的存在である。男子相手でも別け隔てなく話をするために男子からの人気も抜群。 今どきの小学生女子らしくオシャレには敏感で、今日の装いはピンクのミニワンピのコーデである。 「ちょっと、親と喧嘩しちゃって。『バカヤロー!』って怒鳴りながら家出てきちゃったのが引っかかってさ」 「喧嘩? 原因は?」 「進路の問題。私立中学に行けって言われてさ」 「ん? 受験組だっけ? 春日井くん、私立行くほど成績よかったっけ?」 光忠は首を横に振り、私立中学に行く意思がないと示した。 ちなみに、光忠の学校の成績は体育だけが5で他全ての教科が3から2。到底、私立中学受験に挑める成績ではない。 「剣道推薦。特待生だから、試験当日の世間話みたいな面接だけで合格(うか)るんだってさ」 愛菜は僅かに渋い顔をしながらうんうんと頷いた。 「そっかぁ、春日井くんの家は警察庁にも顔が利く剣道の道場だもんね? 縁故(コネ)で私立行けるんだ。親ガチャ大当たりじゃない! 羨ましいわぁ! お友達になりたいわぁ!」
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