地下一階 チュートリアル・地下鉄の駅は迷宮に変わっていた

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 光忠の家は剣道道場である。江戸時代から続く歴史の長い道場で、道場名は「春日井剣道道場」と言う。 春日井剣道道場の江戸時代の当代は歴代の将軍の剣術指南役を任されていたぐらいに由緒正しきもの。この現代の当代(光忠の父)は警察庁にて剣道指南を行う程で日本剣道界を代表する剣士である、その縁で政財界にも顔が利く程であった。 光忠は愛菜を軽く睨んだ。 「親ガチャとか言うなよ。品性を疑われるよ?」 「出ました。親ガチャ大当たり民の上から目線」と、愛菜は嫌味と皮肉を込めて吐き捨てた。 「そんなのどうでもいいよ。俺は皆と同じ中学に行きたいんだよ。俺が行く私立さぁ、西京院大付属って言うんだけど、剣道部が強くて超がつくほどの強豪なのよ。そこの顧問がウチの親父の後輩でさ、強いやつが欲しいって言うから俺に白羽の矢が立ったってワケよ? 人の進路勝手に決めるなよなー?」 「それを親に言って喧嘩になったわけ?」 「そうだよ。マジで私立行きたくないもん、スポーツ奨学生ではあるけど勉強難しいトコとか行きたくないし。一年の時、そこの初等部にいたんだけどさ、勉強難しいからやめて公立に転校してんのよね? お受験の勉強もなしに親同士の話し合いで勝手に小学校決めといて、そりゃあねえよなあ? 今回はそのリベンジなんだとさ。これでまた喧嘩になったんだよ」 愛菜は光忠の額を軽く小突いた。 「いてぇな」 「そこ、あたしも受験予定なんだけど。夏休み一日も休まずに勉強して模試受けてもB判定で当落スレスレなのに、春日井くんは面接だけで合格(うか)るの? ホント、世の中不平等だわ、嫌になる」 愛菜は深い溜息を吐き、斜向かいの席に座る男子二人に向かって小声で毒吐(どくづ)いた。 「推薦入試に切り替えるために委員長に立候補までして、今回の遠足だって『いいこちゃんアピール』のために、クラスの不良在庫二人引き受けたって言うのに」
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