第三章:パン屋で怪しい男『∵』に会いました

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 ルシアはカイルの枕元に、魔法具を置く。この魔法具は、遠くにいる相手の声が聞こえる魔法具で、二つが対になっている。カイルの枕元においたのは、発信器。そしてルシアが受信器を持つ。カイルが目覚めて何か言葉を発すると、この受信器から聞こえてくる仕組みになっているのだ。 「お義父さん」  治療室には誰もいなかった。お茶を飲んでいた二人も、ルーファに診てもらって帰ったのだろう。 「私、ちょっと買い物に出てくるわね。カイルが起きたら、お願い」  受信器をルーファへと手渡した。 「ルシア。外に出るならちょうどいい。これを、もらってきてくれないか? これから祭りの期間に入ると、今まで通り仕入れにいけなくなるからね」 「え? そうなの? 仕入れ、行けなくなるの? 買い物は?」 「露店が出るからね。荷馬車も通れなくなるし、流通に影響するんだよ」 「知らなかった。祭りっていいことだらけではないのね」 
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