第三章:パン屋で怪しい男『∵』に会いました

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 クレメンティも人の顔が『∵』に見える仲間だ。むしろ、ルシアがそうなったのは彼女のせいでもある。だからクレメンティも、人の声とか体格とか身に着けている者で人を判断する。 「そうなんじゃない?」 《露店の準備も始まってはいたんだけど、あれって誰でも出せるのかしら?》 「どういうこと?」 《だから。見かけない服の人たちも、露店の準備をしていたというか。まぁ、そんな感じよ》 「そんなことって、あり得るのかしら?」  商売をする者は国に届けを出しているはず。露店も、同じようなものだろう。  もしかして、お祭りがあるのを聞きつけた他の国の人とか、行商人とか、そういった人たちが露店を出そうとしているのだろうか。それであっても、国への届けは必要だ。 「クレメンティ。ちょっと、外、出てみる?」  ルシアが動けば、クレメンティの行動範囲が広くなる。 《そうね。今のカイルなら、あと三十分は寝ているわね》  彼女がそう言うなら、間違いないだろう。なんとなく起きそうな感じがわかるらしい。
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