第三章:パン屋で怪しい男『∵』に会いました

12/22
196人が本棚に入れています
本棚に追加
/313ページ
「お祭りを楽しんでいるところに、荷馬車が走ってきては危ないだろう? だから、そうやって規制をかけるんだ。まぁ、たった数日のことだし、お祭りで人がたくさん来てくれたほうが、商売人たちも儲かるからね。だから、仕入れの時期も調整するわけだ」  普段とは違う生活では、何が起こるかわからない。だから、不測の事態に備えてということらしい。  そんな話を聞きながら、ルシアはルーファから預かった用紙の内容を確認した。  いつもより、薬草の数が多いようにも見える。 「義父さん、もしかして、いつもより多い? 患者さんが増えるってことがあり得るってこと?」 「どちらかというと、そうとしか考えられないね。浮かれていつもより多めに酒を飲む者がいるかもしれないし、ちょっとのことで喧嘩になるかもしれない。気が高ぶっている人間というのは、無茶をしやすいんだよ」 「私も手伝ったほうがいい?」 「時と場合によるね。今だって、いろんな薬を作ってもらえるだけで十分に助かっている。ここは王宮とは違うからね。できることをできる範囲でやればいい」
/313ページ

最初のコメントを投稿しよう!