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八王子側が書いた「下り第三列車指導者」という件名はーー独り合点で書いたらしく本当に紛らわしいがーー小宮駅に指導者の選出を一任するという意図だったようだ。
ところで、富士を送り出した五時三〇分の時点で小宮駅長が考えていた計画はこうだった。
一、東飯能発上り第四列車が拝島駅から小宮に到着する(指導者・敷島)
二、一は八王子から下り第三列車(指導者・富士)が小宮駅に到着するまで上りホームで待つ
三、両列車が小宮駅に着いた時点で、それぞれ次の区間の指導者を交換して乗り込ませる。
四、上り第四列車が八王子に向かう(指導者・富士※折り返し)
五、下り第三列車が小宮から拝島に向かう(指導者・敷島※同じく)
六、第五下り、第六上り以降についてもこの繰り返し(指導者は打ち合わせにより交代可能)
このように別名「人間通票」とも比喩される「指導式」だが、タブレット式よりは単純往復のスタフ式(※※)に近い。
だが今、下り方面の駅構内には伝令用の単機がある。八王子に帰そうにも小宮駅には方向転換用の設備がないので、転回施設のある東飯能駅まで回送で出してやらなければならない。
※※通票式閉塞の最も単純な方法。「スタフ」とは棒状の通票で、スタフを乗せた列車だけが駅間を通行できる仕組みはタブレット式と同じだが、スタフは駅間に一個だけしか存在せず、上りと下りの列車で交換されて駅間を単純往復する。
(これを上りと下りの本数が違う場合に対応できるよう発明されたのが「お稲荷さん」によるタブレット式閉塞である)
ちなみにスタフ式閉塞区間はJRを含むローカル線に数カ所残存する。
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