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小宮駅長は八王子駅長のメモに改めて目を落とした。そこには次のような内容が書かれていた。
・上り第四列車の始発駅である東飯能駅から「当列車を牽引する機関車が故障したため代わりの機関車を寄越して欲しい」と連絡があった。
・この8851単行機は代替機として東飯能駅に送り、折り返しで上り第四列車を牽引する予定である。
・下り第三列車との運行順序の調整と指導者の人選は小宮駅に任せる事。
予告もなく単機が現れた時にはヒヤッとしたが、八王子駅長にしてみれば下り第三も上り第四も手の内にあったわけである。
「なるほどな。伝令はついでって訳か。さすが、やる事に無駄が無いな」
駅長は感心し、
「それにしても、東飯能と八王子は連絡が取れているんだな。停電じゃないのか」
と、少し羨ましそうに呟くとまた考えを巡らせた。
「下り第三列車が間もなく到着予定で、ここにいる8851下り単行機関車が、上り第四列車を牽引予定か……困ったな」
先ほど伝令を出した時点で下り線のダイヤは既に大幅に遅れていたが、通勤通学客の多い上り線はまだ時間通りに来る見込みがあった。だから先に出す想定でいた。東飯能の機関車の故障なんて、知る由も無かったのである。
8851号が東飯能から折り返しで戻って来る所用時間は通常の天候でも約四十分ほど。上り第四列車指導者候補の敷島自身、まだ苦労して橋梁を渡っている最中かもしれない。
最初の計画通りだとこの後すぐに下り第三列車が到着したとしても、8851単機が上り第四として戻って来るまで最低四〇分は小宮駅で待ちぼうけとなる。ただでさえ遅れているダイヤが更に乱れてしまう。
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