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ブラックホール
――おなかがが空いた。
いつも同じことを考えている。
自分は生まれてきてから今まで、たくさんのものを食べてきた。しかし、なにを食べてもおなかが膨れない。
何を食べれば満腹になるだろうかと思うから、気になったら何でも食べる性分になってしまった。
ある時は土を食べてみた。そんなにおいしくなかった。
ある時はガスを食べてみた。空気が溜まるだけで、おなかは膨れなかった。
ある時は岩を食べてみた。ちょっとつっかえた。
ある時は鉄を食べてみた。ぜんぜんおいしくなかった。
ある時は、ある時は、ある時は……。いつもそれの繰り返し。なにを食べても満足しない。いくら食べても満腹にならない。
自分が食べたものがどこへ行くのかもわからない。ただ興味がないから。それだけ。
自分が一番興味があるのは、食べ物。
何をどのくらい食べれば満腹になるのか。どんなものなら自分を満足させてくれるのか。一番不思議で、一番気になる。
この世の中には、自分を満足させてくれるものがあるのか。あることを信じて、今日もなにかを食べている。
べつに食べていなければすぐに倒れるというわけではない。けれど、知りたい。おなか一杯という感覚を、一度感じたい。
感じたいという私欲のために、今日も動く。自分を満足させてくれるものを探すため。時折、浮いているちりや星を食べながら。光を捕まえて、食べてみながら。
自分が通った後は、何もなくなる。すべて食べるから。だって、どこに満足させてくれるものがあるかわからないじゃないか。
ある日知った。世界が自分を、宇宙に空く黒い穴、「ブラックホール」と呼ぶことを。
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