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「え、中庭ですか?」
マリネラは中庭でいちゃついていたカップルを思い出した。あの中に入っていくのはさすがに気まずい。
「いや、そこのバルコニーだ」
アルバートが指さしたのは、中庭とは反対側の外に張りだしたバルコニーだった。
「あぁ、バルコニーですか。いいですね」
マリネラが頷くや否や、アルバートはバルコニーに向かって歩き出した。
マリネラの腰を抱き寄せ、手をひいて。
「ひゃぁっ」
びっくりして変な声が出る。
慌てて右上のアルバートの顔を見上げた。
「あのぉ…」
蚊の鳴くような声で言っても返事はない。
マリネラは自分の心臓の鼓動が急に速くなったのが分かった。
(どういう状況…!?)
バルコニーは目と鼻の先にあったので、マリネラはものの数十秒で解放された。
(心臓に悪いわ…)
なにか言うかと思ってアルバートを見つめるが、特に言及するつもりはないらしい。
代わりに
「ここならその腕も目立たないな」
とだけ言った。
(はぁ!?何それっ!?)
「そんなに気になります!?というか、急に体触らないでください!!それで、なんで謝りもしないんですか?普通なんか言うでしょ!?」
何も言及しないのに腹が立って、マリネラはまくし立てた。
アルバートはその剣幕に目を丸くしている。
「腕がどうのこうのより、そっちのほうがマナー違反でしょうが!なんか言ってください!」
「……すまない。マリネラ嬢の気持ちを考えてなかった。君の言う通りだ」
アルバートはハッとしたように謝った。
そしてバツが悪そうに続ける。
「その、やはり、腕が気になってしまって。他の男が何人かマリネラ嬢を見ていたし、そいつらから見えないようにしようと、あんなことをしてしまった」
「でも、そうだな、いきなりあんなことをするべきではなかった。許してくれ」
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