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すると、アルバートが少しあわてたように言う。
「あ、別にマリネラ嬢が美しくないと言っているのではないぞ。むしろ…」
「むしろ?」
マリネラが聞き返すと、ボソッとささやいた。
「…そのままで十分綺麗だ」
「え?」
予想外の言葉にマリネラは目を丸くする。
「どうせ踊るのなら、美人とがいいのが男心ってもんだろ」
するとバイオリンの音がまた流れ出した。
中央の方に男女が集まりだす。
「さあ、曲が始まってしまった。行くぞマリネラ嬢」
アルバー卜が肘を出す。
「え?」
「ダンスに入るときは腕を組むものだ」
マリネラはおずおずと自分の腕を通す。
(なにこれ…)
なぜかドキドキする胸を抑えて、アルバートにつづいて歩く。
しかし、少しずつ中央に近づいて、人々の間をぬって歩くたび、見られているようで落ち着かない。
(やっぱり私浮いてるのかしら…)
はたから見れば、やはり不釣り合いに見えるだろうか。
いたたまれなくて、マリネラは視線を落とす。
「そんなに下を向くな。大丈夫だから堂々としてるんだ」
そっとアルバートが耳元でささやいた。
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