舞踏会当日

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顔をあげるとアルバートがフッと笑う。 「立派なご令嬢に見えるぞ」 「ほんとですか?」 「ああ、俺だって分からなかったんだから」 気づけば、周りには踊っている人しかいない。2組ほど後ろに弟フィルの姿が見えた。 (あら、あのピンクのドレスは…) (あの子、ダンスなんて踊れたかしら) まぁ、弟が楽しんでいるならいいかと、マリネラはクスっと笑った。 「どうかしたか?」 「いえ、弟が貴族のご令嬢を吹っ掛けて、踊っているのが可笑しくて」 アルバートもクスリと笑う。 「ずいぶんな言い様だな。それだと、俺もマリネラ嬢を吹っ掛けて、踊っていることになるのか」 「まぁ、それこそあんまりな言い様です。あれは弟が平民で、お相手が貴族様だから成り立つのです」 アルバートは組んでいた腕をほどくと、マリネラの正面に立った。 すとん、と美しい所作で膝をつく。 マリネラに手を差し出す。その眼差しは、女子ならば、思わずクラッときそうなものだった。 「マリネラ嬢、俺と踊っていただけますか」 「喜んで…」 口にしてから、あっと気付いて、マリネラは口をおさえた。 普通に、はいと答えるつもりだったのに。 イケメンに膝まづかれて、気分もよくて、ついおとぎ話のお姫様チックなセリフを口走ってしまった。 (なんか、恥ずかしいっ。) マリネラはさっとアルバートから視線をそらした。 (早く踊ってしまおう) 「アルバート様、さ、踊りましょうか」 マリネラは少し雑にアルバートの手に自分の手を重ねた。
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