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(疲れたぁー)
1曲だけのつもりが周りに流されて、2曲3曲と踊ってしまって、マリネラはけっこうクタクタだった。
「社交ダンスって、なんかいつもと違うところを使うから、変に疲れますね」
「そうか。俺も正直得意ではないな」
対してアルバートは涼しい顔。
「でも、お上手だったじゃないですか」
「あれは、小さい頃に、母上に相当練習させられたのが身に染みてるんだろう」
アルバートは少し遠い目をして言った。
マリネラは暑苦しくて長手袋を脱いだ。
少々はしたないかもしれないが、今は広間の隅にいるので、あまり目立たないだろう。
「お母様はダンスに厳しかったんですね。今日はいらっしゃるんですか?」
「いや、最近は体調を崩していて、あまり社交界に参加していないんだ。前はよくお茶会に出かけたり、父上と夜会で踊ってたりしてたんだがな。俺もよく一緒に踊らされたものだ」
そう言ったアルバートの口調からは「踊らされた」というより「楽しんで踊っていた」ように、マリネラには感じられた。
(ふ〜ん、いいお母さんなのね)
「楽しそうなお母様ですね。少しお会いしてみたいです」
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