舞踏会当日

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(…ん?私、今、なんて言った?母親に会いたいとか言わなかったか?) マリネラは何の気なしに言った言葉に1人青くなる。 さすがに親に会いたいなんて、玉の輿狙いだと思われそうだ。 「え、いや、今のはちがっ」 「会ってみたいか?」 アルバートがマリネラに視線を投げた。 すると、あらわになった腕を見てギョッとしたような顔をした。 「なんで手袋をはめてないんだ」 その言葉にマリネラはキョトンとする。 「え、暑苦しかったので。いつもこんなもの着けないですし。ここだと目立たないから外してもいいかなと」 アルバートは顔をしかめる。 「袖の短いドレスで肘から上が露出しているのに、手袋をはめないのは、はしたないぞ」 はしたない、なんて言われてマリネラはムッとする。 「お貴族様からみたら『はしたない』でしょうけど、暑かったからしょうがないじゃないですか。長手袋なんてつけたことないんですよ」 「とにかく、手袋ははめてくれ」 駄々をこねるわけにもいかないので、マリネラは精いっぱいの不満を顔で表した。 熱気のこもった長手袋に腕を通す気にならなかったのだ。 (べつにいいじゃない。さっきも誘っておいて「嫌」とか言うし、なんなのこの人) アルバートは何をそんなにヤキモキするのか、何度も手袋をはめろと言ってくる。 「それもお母様の躾ですか。『女性は長手袋で肌を見せないようにするべし』とかなんとかって」 「まぁ、母上もそんな風に言ってはいたが…」 するとアルバートは諦めたのか 「そんなに暑いなら外にでも出るか」 と言った。
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