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舞踏会当日
それから数日。
すっかり日が落ちて、満月が南の空高くにのぼる頃。
空色のふくらんだ袖のドレスと長手袋に身を包み、首には黒いベルベットのチョーカー、頭はボリュームのあるお団子に結い上げ、黒いリボンで飾った、マリネラは王宮の大広間にいた。
と言っても、出口にほど近く、すぐそこの庭のベンチでいちゃつくカップルの見える、端の端のほうである。
広間の中央では大勢の男女がヴァイオリンの調べに乗って踊っている。色とりどりのドレスが広がる様は美しい。
そしてあろうことか、その中の一組に父のターナーと母メアリも混じっているのだった。
(なによ、年頃の娘を差し置いて、自分達だけ楽しんじゃって)
言い出したときは何の冗談かと思ったが、宮廷舞踏会への招待は本当で、実際に後日招待状が届いた。
王家の紋章が入っていて、弟のフィルと2人で「ひぇ~」と驚いたものだ。
メアリはすっかりうきうきで、仕立て屋に毎日通い詰めるほどのはりきりよう。
マリネラも毎日連行され、今着ている空色のドレスが出来上がったというわけだ。
途中からまんざらでもなかったマリネラだったが、悔しいのでメアリにはずっと嫌そうな顔をしていた。
(そしてフィルは…)
マリネラは視線を中央で踊っている人々から少し左にずらし、音楽団の付近に立っている弟を見つめた。
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