舞踏会当日

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弟と向き合って話しているのは、愛らしいピンク色のプリンセスドレスに身を包んだご令嬢。残念ながら、こちらからはご令嬢の腰までのびた艷やかな黒髪しか見えない。 しかし、時おり肩をゆらしており、弟との会話を楽しんでいるようだ。 (フィルもなかなかやるじゃない) 身長もとうに姉を追い越し、顔つきも母メアリに似て、柔らかく儚げな雰囲気がある。色白で髪や目の色素が薄いため、ひょっとしたら、美男子に見えることがあるかもしれない。 (ま、せいぜい頑張りなさいよ) マリネラはフィルからも視線を外し、一人ため息をついた。 それなりに憧れのあった宮廷舞踏会だったが、ダンスをするような相手もいないし、美味しいご飯を戦利品として持ち帰るしかなさそうだ。 さっき給仕からもらったグラスに口をつける。何だか喉が乾いて、中身をよく見ずにぐいっと流し込んだ。 (…んんっ!?) 口に含んだ瞬間、違和感に目を見開いた。 吐き出すこともできず、そのまま口に押し込む。慌ててグラスから口を離した。
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