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「はい。今回父の商会が献上させていただきました椅子を王女殿下がお気に召されたようで。一家全員招いてもらっております」
「そうか。言われなければ、分からないものだな。俺はどこぞの貴族の姫かと思ったぞ」
そこでアルバートは初めて笑った。
「少々元気のいい、な。酒を飲んだときの顔はなかなか良かったぞ」
(見てたか!)
すぐに水を渡してくれたくらいなのだから、見られていてもおかしくはないが。
「お見苦しいところをお見せしました」
頭を下げながら、あの顔は少なくとも、こんなイケメンに見せるものではなかったなと、マリネラは思った。
恥ずかしかしいやら、腹が立つやら。
ちょうど、ダンスの音楽が止まった。
いつものマリネラであれば、こんなとき、一言くらいチクリと言い返すのだが、相手は貴族。反感を買っていいことはない。
父の商売に悪い影響があってはいけない。
(こういうときはお世辞のひとつくらい言うべきかしら)
「今夜はアルバート様のような素敵な殿方にお目にかかれて、嬉しゅうございます」
マリネラは言い回しにも気を付け、わざとらしくないように言ったつもりだった。
しかし、それを聞いたアルバートは笑い出した。
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