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「あ、あの、私とですか?貴族でもない私と?」
「ああ」
「そんな恐れ多いこと。私は庶民です。アルバート様のような方には到底釣り合いませんわ」
「今日は一種の無礼講のようなものだ。マリネラ嬢も招待されているのだから、問題ない」
「しかし…」
マリネラは差し出された手のひらを見つめる。
「頼む」
アルバートは引き下がる様子がない。
「……」
「……」
ずっと膝をついて、手を差し出したままのアルバート。
さっきから何人かが、ちらちらとこちらを窺っている。
さすがにマリネラも焦り始めた。
(これ、何が何でも了解しないと、終わらない感じなの!?)
(というかアルバート様もずっとその体勢保っていられるのすごいけど)
これ以上目立つのも恥ずかしいし、まあいいかと、アルバートの手のひらに手を重ねる。
「一曲だけなら」
「ありがとう、マリネラ嬢」
アルバートはすっと立ち上がり、マリネラの手を両手で握りしめた。
その顔には先程の真顔とは正反対の、満面の笑みが浮かんでいる。
その笑顔が何だか胡散臭く感じて、マリネラはたずねた。
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