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「アルバート様はなぜ、そこまで私に頼むのですか?」
すると、面倒くさそうに答えた。
「ん?ああ、テーブルで飯ばかり食っていたら父上に『一曲くらいパートナーを見つけて踊ってこい』と追い出されてしまってな」
「でしたら、他にいくらでも貴族のご令嬢方がいらっしゃるじゃないですか」
それを聞いて、アルバートは顔をしかめる。
「どいつもこいつも、嫌ってほどに白粉をはたき、頬を赤くぬり、おまけにキツイ香水までつけている。俺はあの、むせるような匂いが苦手なんだ。一緒に踊れなんて、とんだ拷問だな」
「…はぁ」
マリネラは、なぜアルバートが自分に声をかけたのか、何となく分かった。
「つまり、化粧が薄いから私に目を付けたのですね」
呆れたように言うと、アルバートはバツが悪そうに目線をそらした。
「正直に言うとそうだ。気を悪くしたらすまない」
確かにいつもより念入りに化粧をほどこしたとは言えども、貴族のお姫様のフルメイクの前では大したことはない。
日に焼けた肌は隠しきれないし、綺麗にお化粧をした貴族の中では浮いてしまうだろうと、端のほうにいたのだけれど。
(まさか、逆にそれで目をつけられるなんて)
なんだか面白くて、マリネラは小さく笑った。
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