プロローグ

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ここは王都。 商人の大きな屋敷がたち並ぶ西区の入り口にビサンテ家の屋敷はあった。 ある日の夕食。 ビセンテ家当主、並びにヴィンセント商会会長のターナーは家族に切り出した。 「我が家は宮廷舞踏会に出席することになった」 娘のマリネラも息子のフィルも妻のメアリも 動かしていたナイフを止めた。 まじまじとターナーを見る。 「はぁ···?宮廷舞踏会?何言ってるの、パパ。」 最初に口を開いたのは娘、マリネラだ。 「わたしたちお金はあるとは言えども、一般市民よ。一般市民!!宮廷舞踏会なんて雲の上の存在じゃない。」 「いや、というのもな、この前王女殿下に献上した長椅子がえらく気に入ってもらえたそうで。王女殿下はご満悦なんだと。それでぜひこれを作った職人と届けた商人にお礼がしたいというんで、一家まるごと招待してくださったんだ。」 「あら、じゃあルードさん家も舞踏会に行くの?」 ルードはヴィンセント商会に椅子やテーブルなどの家具を納品してくれている家具職人。決して安くはなく、大量生産でもないが、丁寧で長持ちする彼の家具には定評がある。 王女殿下に献上した長椅子もオーダーメイドで彼が造ったものだった。 「ルビーちゃんが、ものすごく喜ぶんじゃあないかしら。」妻、メアリがのほほんと言う。 ルビーは12歳になるルードのひとり娘で、小さい頃からお姫様やお城といったものに強い憧れがあった。 マリネラもルビーと一緒にお姫様ごっこや、お茶会ごっこをよくしたものだ。
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